まーヴのタンザニア暮らし

アフリカ、タンザニアでの留学生活ブログです

おまえのものはおれのもの

 

「ちょっとアタシのやつ今調子悪いからさ~、お前のパソコンのプラグとモデム貸せよ」

 

すこすこ寝ているまーヴを早朝にわざわざ起こしてきたルームメイトのグレイス姉さん。

(彼女に対するワタクシの悪意が如実に伝わる日本語訳になっているのは気のせいです)

 

睡眠を邪魔されたまーヴは、とにもかくにも不機嫌でしたので、

彼女の言っていることをあまり頭で考えることもなく

「わかった、とりあえず寝かして・・・てかまだ6時でねえかよhhdrxkhqwmvんllv・・・」

 

と非常に杜撰な対応でもって二度寝に入ったのでした。 

 

 

 

彼女が私のパソコンのプラグとモデム両方を持って、

実家に帰ってしまったと気づいたのは午後、自分がパソコンを使おうと思った時でありました。

 

 

 

テスト前でインターネットを使いたかったのですが

プラグもモデムも持って帰ってしまったグレイス姉さん。

 

 

ま:「使いたいので返してください。」

グ:「実家だからムリ。」

ま:「まさか実家に持ってくなんて思ってなかったの。」

グ:「お前貸すって言っただろ。」

 

そして彼女は高らかにこう続けたのであります。

グ:「あなたのものは私のものでしょ」

 

 

タンザニアジャイアンが現れた。

 

 

と、そう思いました。

 

ジャイアンを教祖とするジャイアニズムをここタンザニアでも目撃することになるなんて・・・

お前のものは俺のもの

こんな神秘的な言葉を吐いていいのはジャイアンだけです。

しかしグレイス姉さんは不変の事実を語るかのように言ってきます。

電話の向こうで彼女が鼻を膨らませてドヤア!という表情をしているのが見えました。

ジャイアン哲学はここアフリカ大陸まで渡ってきたのですね。

 

 

翌日、彼女は無事にプラグとモデムを返却してくれたのですが、

もちろん「ごめんね」なんて言葉は聞こえませんでした。(まーヴは耳遠くないです

代わりに私が「あ、・・・ありがとう」としどろもどろになって言ってしまいました。

 

ここまで来るとまさにのび太くんです。

ダンスサークルでつけてもらったあだ名が「せわし」だったのも何かの縁でしょう。

まーヴはのび太の血を引いているのに違いありません。

 

 

※このお話はあくまで「まーヴとグレイス姉さん」の間に起きたことであって、

グレイス姉さんが一般のタンザニア人を代表しているわけではない、

ということは言うまでもありません。

 

 

 

 

が、幸いまーヴにはジャイアン以外にもお友達がおります。

 

 

彼らは「お前のものは俺のもの」

の後に「俺のものはお前のもの

 と、あの日テレビの前の視聴者が待ち望んでいた言葉を私の前で口にし、

実際に体現しているのであります。

 

 

 

 

 

私の留学しておりますダル大には

構内に7棟の寮、構外には「mabiboホステル」と呼ばれる集合寮があります。

 

 

 

 

 

大学のホームページによると、寮全体の収容人数は6871人。

しかし年々学生の数だけは増加し、今年度はなんと21,440人もの学生が。(!)

在学生の数に比して、寮の数が不足していることは明らかです。

お金に余裕のある学生は、構外に部屋を借りていますが、

ほとんどの学生にそんな余裕はありません。

そのため、年度始まりの9月、10月はどの学生も寮に入ろうと必死になります。

 

 

 

棟によってその部屋の構造はいくらか違いますが、

一般的な部屋には二段ベッドが2つおいてあります。

つまり、4人部屋です。

 

 

タンザニアにやってきた当初のまーヴは

筋肉ムキムキ男子4人が毎日同じ部屋で寝ると聞き、

ひぃ、なんと可哀そうな、と思いましたが

驚くのはまだ早い。

 

 

なんと彼ら、実際には4人部屋を8人で共有して生活しているのです。

 

 

 

 

 

え、なに魔法でも使えるの?

 

 

いいえ、ここはホグワーツではありません。

 

 

一つのベッドに2人で寝るのです。

 

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↑お友達のお部屋

 

 

「ええ~二人部屋とか絶対無理だよ。大体いつおならするんだよ。」

と不平を並べていたまーヴは、自分がいかに

恵まれた環境でぬくぬく育ってきたのかを実感しました。

 

 

 

もちろん校則上、定員以上の学生が寮で寝泊まり、

ないしは生活することは許されていません。

しかし、学校側も黙認しています。(だから皆も内緒にしててね

 

 

運よく寮の部屋をGETできても、できなくても、

ほとんどの学生は一年間筋肉男とベッドを共有するという運命にあるのです。

 

 

 

共有するのはベッドだけではありません。

パソコンを持っている学生がいると、そのパソコンを部屋のみんなで使います。

パソコン内にフォルダをつくり、それぞれが自分の写真や音楽を入れます。

テスト勉強のときには持ち主が誰かは関係なく、優先順位の高い仕事のある者に回ります。

 

 

その他、机、電気ケトル、コップ、バケツ、etc…

きっと挙げだすとキリがないと思いますが、もっと多くのものを彼らが当たり前のように共有していることは想像に難くありません。

 

 

 

 

一方のまーヴが住んでいる寮は、先述の通り2人部屋です。

部屋も十分に広く、もちろんベッドも1人で占領できます。

 

 

下層の者を見せ、不満を鎮める、

というのは権力者が国を統治するためによく使う手段である、と世界史で教わりましたが、

2人部屋への不満がこんな形で鎮まってしまうなんて、タンザニアに来る前は思ってもみませんでした。

 

 

 

ルームメイトが勝手に私の服を着ても、私のナイフを使った後洗わず放置しても、

私の洗濯バサミを取って使っても、パソコンのプラグを持ってっても、

彼女の中では「共有」しているという感覚で、

人のものを横取りしている、という感覚は全くないのでしょう。

 

 

 

人のものと自分のものをあまり区別しない

といいますと、ワタクシのような気弱な人間は「ものを奪われる」というのび太側の立場を想起しがちですが、

実は「自分も使ってよい」というギブアンドテイクな関わり合い方を意味していたのです。

(決してジャイアンではない!

 

 

 

 

 

ということに気づいてからは、まーヴは地味にグレイス姉さんの爪楊枝を

一日1本、無断で消費するよう心掛けるようになりました。

 

 

 人の部屋だけ載せるのもなんだか気が引けるので、ついでに私の王宮もお披露目いたす。↓

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追記:グレイス姉さんとまーヴはうまくやっています。