ンデベレ村への大冒険
留学中取っていた素晴らしい授業の一つに"African study in Art"というコースがありました。
この授業では毎回生徒がアフリカのエスニックグループについて調べプレゼンするのですが、ある日お友達のプレゼンで紹介されたのがンデベレ人でした。
写真で見せられたンデベレ人のカラフルなお家のアートに、私の心は一瞬にして虜になりました。
きっと皆さん一度はお目にかかったことがあると思いますが、おそらく日本人からして「これぞアフリカ!」みたいな文化を持っているのが彼らンデベレ人です。
イケメンの彼氏が隣にいるならまだしも、共有する相手もいないのに自然の美しさに只々平伏すのは御免なので、まーヴは自然観光は全てキャンセル!
そんなわけで南アフリカに来る前から、どーしてもンデベレ人のアートを生で見たくて見たくてしょうがなかったまーヴはンデベレ村を探すことに。
正直、今の時代インターネットで検索かければサクッと出て来て憧れのンデベレ村に着けるものだと思っていました。
ところが検索しても検索しても欲しい情報が出てこないじゃーありませんか!
正確には出て来るには出て来るのですが、「Mpumalangaに住んでいる」という超アバウトな情報しか出てこないのです。
どれくらいアバウトかと言いますと、「九州に住んでいる」っていうくらいアバウトなんです。
それじゃあヨハネスを出てどこに向かえばいいのか皆目検討つかないのです。
全然役に立たないヨハネス人は放っておいて結局約半日インターネットに噛り付いてやっと出てきたのがKwaMhlanga(くわむさんが)という地名。
ふむ、確かにMpumalangaに位置しています。
おそらくKwaMhlangaというのも〜区というくらいにアバウトですが、もうとにかく行って現地調査じゃ!と腹をくくって出発。
私のいるゲストハウスから車で10分くらい行ったところにバスステーションがあります。
KwaMhlanga行きのバスがあるかどうかもよくわからないけれど、行って聞いてみろと言われるのでとにかく行ってみました。
行ってみてビックリ、バス会社は10以上もあってしかも聞いて回ったらKwaMhlanga行きはない、と。
じゃあどうしろっちゅーねーん!!!
と途方に暮れているとお兄ちゃんが助け舟を出してくれました。
さすがアフリカ、周りの人もわらわらと寄って来て一緒に探してくれました。
↑友達に電話で聞いてくれるお兄ちゃん
どうやら長距離バスではなくローカルなミニバスに乗ればいいらしい。
5分ほどてくてく歩いて外に出ると、ありましたミニバス!
しかしこのミニバス他のアフリカの国々よろしく、満席にならないと出発しない。しかも乗客は9時の時点で今のところまーヴただ一人です。
「まあ、朝飯でも一緒に食わんかね」
と言われ他の乗客を待つことに。
二時間経過
「マイスウィートハートゆか、こら今日はあかんわ、あんた他のバス乗り継いで行きんさい」
今更!
そんなこんなで11時、まずPretoriaまで行ってそれからバスを乗り継いでKwaMhlangaを目指すことに。
無事に乗り継ぎを済まし、13:30、ようやっと着きましたKwaMhlanga!
て、あれ?
こんなドデカいショッピングモールあるんやけど、ンデベレ村は一体どこ?
来る場所間違えたの私?
と不安になるもとにかく聞いてみないことには始まらない!
そこらへんでたむろしていたお兄ちゃん集団に聞いてみました。
「ンデベレ村に行きたいんだけど、どこか知ってる?」
「ンデベレ村!知ってるも何も俺たちンデベレ人だぜ!」
ビンゴーーーーー!!!!!
暇そうなお兄ちゃん達に案内を頼み、そこからタクシーを拾って30分ほど行ったところにあるSiyabswaという村を目指します。
タクシーのおじちゃん「あんた南アフリカどんくらいおんの?」
まーヴ「4日くらい前に着きました」
タクシーのおじちゃん「えええ、ほんまかいなあんた!住んでると思うたわ!一人でヨハネスからこんな遠くまで来て、しかもこんな汚いお兄ちゃん達に話しかけて怖くないんかいな!」
まーヴ「全く!」
タクシーのおじちゃん「勇気あんなーお嬢ちゃん!」
まーヴはアフリカに一年住んで現地に馴染む術を身につけたようです。怖くないけどンデベレ村に着くのかが心配!
30分後
つ、つ、つ、着いたあああああ!!!!
しかも聞いてビックリ!
ここはンデベレアートを世界に知らしめた超有名なアーティスト、Esther Mahlangu(エスターマサング)さんのお家だったのです!
ままままままさかご本人に逢えるわけあるまい、と思っていたのですが
普通にいました。
まーヴ大感激!!!!!
エスターマサングさんは日本に来日して展覧会を開いたこともあるというようなお方で、来週にはニューヨークでの展覧会のため渡米するそうです。ひーえー
この原色の入り乱れる世界に私の目はキラキラが止まりません。
ンデベレアートについて言及しますと、このカラフルなお家の装飾は全てンデベレの女性によってなされます。
そしてこのジオメトリックなアートは全てハンドライティングで描かれていて、定規などは一切用いません。
使う画材は鶏の羽根です。
そしてまーヴが最も気になっていたのは真鍮のリングアクセサリーについて。
聞くと、
首飾りは親から、腕・足は夫から結婚の際に贈呈されるものらしく、それらは夫が死ぬまで外すことが出来ないそうです。もちろんシャワーのときも寝るときも!
物理的に外せないのではなく、文化的に外せないのです。
気になったのはエスターさんは何度も海外に行っているのに飛行機に乗るときに着脱を要求されなかったのかということ。
「毎回それがネックでねえ。いつも外せと言われるけれどンデベレの文化で外すことは許されないのよ。だからフランスに行くときの飛行機では許可を得るために一晩空港で待たなくてはならなかったわ。」
と真鍮リングエピソードを語ってくれました。
絶対重いだろうに、あんなものじゃらじゃら付けて眠るなんて信じられない。
ちなみにエスターさん、自分のお家の敷地内にゲストハウスも経営しております。(ウェブサイトはないので検索しても出てこないかも)
一泊500R(約5000円)と、かなりラグジュアリーな感じでございます。
カップルでいかがでしょうか。(旅行会社の回し者ではない)
残念ながら今回は、その他のンデベレのお宅を訪問する時間の余裕がありませんでした。
エスターさんに写真を撮っていいですか?と聞くと20R(200円)要求されたので、まーヴは苦笑すると同時に観光客に慣れ、恐らく嫌気がさしているであろう彼女にとても申し訳ない気持ちになりました。(とか言ってやっぱり写真撮るのは日本人の性か)
もう少し歩いて回ったら村の様子もじっくり見れたと思いますが、今回はエスターさんに会えただけで万々歳としましょう。
エスニックグループのアートの歴史、文化は知れば知るほど面白い。
それは集団の秩序を守るためであったり、生きる意義を与えてくれるものであったりします。
現代を生きる日本人の私たちにはとっくに失われてしまったものだと思います。だからこそ私はそういう強いアイデンティティの主張に惹かれているのかもしれません。
それぞれが自分の出自に誇りを持って、「私は○○よ。」と自己紹介するタンザニア。
集団とは何かを考えるとき、アフリカ人の個々の在り方を私は非常に羨ましく思います。
エスターさん、お兄ちゃんたち、ありがとうございました。