スターへの道?!どきどきPV撮影
テレビをつければいつもダイアモンド。
隣には頬を染めて彼に夢中な彼女。
「くそう!なんでダイアモンドばっかりなんだよ!」
と、愚痴をこぼすタンザニアの青年が一体どれだけいることでしょう。
(ダイアモンドってこんな人です
一般人であれば、「到底敵わない相手だ。」と諦めもつくでしょう。
しかし自分自身が成功を夢見るアーティストであれば・・・
ダイアモンドに対して抱くのは
敬意でも憧れでもなく、敵意なのです。
「く、くそう今に見てろよ!俺だって大スターになってやるんだい!」
とひそかに野望を抱いているアーティストたち。
そんなアマチュアアーティストの一人、
アレックス(28)に出会いました。
(残念ながらまーヴのタイプではない。)
普段はムウェンゲで女性の髪を編んでいます。
ダイアモンドを超えるビッグなアーティストになることを夢見て、
6年前にコンゴからタンザニアへやってきました。
自分で作詞作曲している彼、曲はスワヒリ語で歌いこなします。
(残念ながらまーヴの好きな曲調ではない。)
ア:「いい曲ができたんだ!今度PV撮影するから、君に出てほしいんだ!」
ま:「お、おう!?まーヴなの?いいの?
でもタンザニア人みたいにセクシーなダンスできないよ!」
ア:「僕が君の周りを歌いながら回りさらすから、
君はにこにこしてるだけでいいんだよ!」
と自分の運命を託した曲のPV撮影とは思えない
非常にライトなお誘いを受けました。
ボンゴフレーバ(タンザニアポップス)のPVが
一体どのように作られるのか非常に興味があったまーヴは、
なんとも軽々しくその依頼を承諾したのでした。
そこらにいるアーティストがPVの撮影をするとなると、
一般的にはTsh300,000~Tsh500,000
(日本円で18,000円~30,000円)かかるそうです。
「そこらにいるアーティスト」とは、
レコード会社と契約などをしておらず、
自らを売り出すために日々別の生業で食べている
ような人たちのことです。
彼らはカメラなど持っていませんので、
PVを作るとなると専門のカメラマンに
お願いしなければなりません。
受注を受けたカメラマンは、
撮影から動画の編集までを請け負います。
アレックスが今回このPV撮影のために
つぎ込んだお金は
カメラマン:300,000Tsh(18,000円)
場所代(プール付):200,000Tsh(12,000円)
他に出演者の交通費、食事代、衣装代を含むと
日本円で、35,000~40,000円は使ったことでしょう。(大金!)
CDが売り出されないタンザニアの音楽業界で有名になるには
①TVでPVを流してもらう
②ラジオで楽曲を流してもらう
のどちらかです。
もっとも手っ取り早いのは
①TVでPVを流してもらうことです。
曲だけでなく、顔も一緒に売れますからね。
しかしTVで自分の曲を流してもらうのも
もちろんタダではありません。
TV曲関係者にお願いするとなると、
「じゃあいくら払うんだ?」
となります。(さすがタンザニア!)
貧しいアーティストはここでもお金を使わなければならないのです。
ラジオ番組に自分を売り込む場合もそれは同様です。
有名になるには楽曲の良さ、顔の良さだけでなく
どれだけお金を出せるか
も重要な鍵となるのです。世知辛いねー
そんな大金をつぎ込むPV撮影。
当日は早朝7:00に呼び出されました。
「おう、よっぽど気合が入っているんでしょうなあ」
と察するも、それはまーヴの早とちり。
こっちの人が時間通りにくるわけがありません。
主役のアレックスがやってきたのは9:30。
カメラマンの登場は11:00。
エキストラは13:00。
時間通りに来たのはまーヴだけ。
ふざけてんのかよ?
と激怒したくなるのをこらえて
予定時間を6時間回った13:00、
ようやく撮影が始まりました。
今回の撮影協力者は以下の3人です。
↓まずは強面のカメラマン、アワックス
キャノンの一眼レフが武器の彼、アレックスと同じくコンゴ人です。
見た目もずいぶんやんちゃですが、
そのやんちゃっぷりは
大切な大切なカメラのレンズを
自分のTシャツでごしごし拭いちゃうほど。
全くプロフェッショナル感に欠けますが、
彼の作品を見ると意外と(失礼)いい感じの仕上がりです。
↓こちらはフューチャリングしているフランク
緑が一段と濃くなった脇がいい感じです。
夜はバーで歌って稼いでいます。
ベテランのミュージシャンと言っていいでしょう。
↓こちらはフランクの彼女さん
フランクが歌っているところにゆったりと入ってきて
自慢の豊満なお尻をカメラに向かってふりふりするために
呼び出されました。
↓そしてまーヴ
タンザニアではPVの中でいわゆる「彼女」役で
登場する女性を「ビデオクイーン」と呼びます。
エキストラとして出ると思っていたのですが、
今回まーヴは、なんとそのビデオクイーンとして
召喚されたのでした。
・・・・私でいいの?????(爆笑)
おそらく他のPVとの差別化を図るために、
少しばかり色の白いおなごを投入しようと考えたのでしょう。
しかし色気のかけらもないまーヴを
PVに登場させるなんてなかなかの賭けです。
いくらまーヴがお尻を振っても
クレヨンしんちゃんみたいにしかならないですし、
しかもクレヨンしんちゃんのようなキレは
まーヴには出せません。
人選ミスも甚だしいぜ。
と不安を覚えながら撮影スタート。
今回の曲、途中
「僕は君のために死ねるよ。」
とか軽~く言ってのけちゃうような
超へビー級ラブソングです。(もっと軽くいこうぜ)
カメラマンは監督も任されていますので、
アワックスの指示に従って私たちは動きます。
↑撮影中
「もうちょっとレンズに向かって訴えかけるようにするんだ!」
とか
「そこは頭じゃなくて腰でリズムをとるんだ」
とか
「キャップは横被りにしろ」
とか実に様々なアドバイスを受けます。
↑「あーだこーだ」
↑三脚をうまく使って撮影
撮影1時間経過。
カメラマンアワックス:「ちょっとメモリーなくなったみたい。」
一同:「はあ~??!」
アワックス:「取りに帰ってくる。」
まーヴ:「なんで予備の持ってないの?
ていうか出てくる前に確認してこなかったの?」
アワックス:「こんなにすぐになくなるとは思わなんだ。」
まーヴ:「はあ・・・(ため息)」
1時間後―
アワックス:「ただいま!これで大丈夫だ、開始しよう!」
気合を入れなおしたところで、お次は外に出ての撮影です。
↑プール前の芝生で撮影
さすが場所代でTsh200,000出しただけあって、
リゾート感ぷんぷんです。
西欧人の私たちに対する奇異な目に晒されながらの撮影です。
カメラに向かって熱唱するひげ面コンゴ人と
その脇でにやにやしてるアジア人と
脇汗が目立つおじさんと
おっぱいのでかいお姉ちゃんを
撮影してるのですからそれはそれは、
変な連中だったことでしょう。
さて、カメラマンアワックスが帰ってきてから
1時間程撮影したところで、
また彼が困り顔をしているではありませんか。
まーヴ:「何、どうしたの」
アワックス:「充電が切れた」
一同:「はあ~??!」
アワックス:「別の日に撮影だね。」
まーヴ:「充電器は?」
アワックス:「家」
まーヴ:「はあ・・・(ため息)」
そんなわけで別日にもう一度撮影し直すことになりました。
前回の反省を活かし(?)、待ち合わせの
1時間後に行くと、またもそこには誰もいません。
電話すると、
アレックス:「今行くから。もう着く。」
しかし結局3時間待っても誰も現れず、
いいかげんに怒ったまーヴは帰宅しました。
ようやく連絡が来たかと思うと、
「カメラが盗られてみつからないから今日はなくなった。」
と・・・。
ふざけてんのかよ?(2回目)
撮影がなくなったならなくなったで、
普通連絡くらいするだろ!
「今行く」って言って3時間も
人を待たせるってどういう神経しているの。
ていうか謝りなさいよ。(激怒)
こちらの人の責任感のなさには本当に参ります。
タンザニアに来て8か月経って、
ようやくこちらの人の時間感覚を学ぶまーヴでした。
肝心のビデオが完成するのは一体いつになることやら。
ポレポレ、気長に待つことにしましょう。
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明日からいよいよ学期末試験が始まります。
テストなんてどうでもいいのですが、
そんなことより、テストが終わると
お友達と会えなくなってしまうんです。
1年生と2年生はテストが終わると、
'Job Training'と呼ばれるものに
約一カ月間狩り出されてしまいます。
それは自分の専門分野のトレーニングなので、
教育実習であったり、観光案内であったり様々なようです。
テストが終わると大半の学生は自分の故郷に
すぐ帰って、このトレーニングに参加するので、
みんなに会うのもきっとテストの日のあと1回。
1年間私の面倒を見てくれた大好きなイケメンくんたち、
さようなら。
振り返れば私はもらったばかりで何にも返せなかった気がいたします。
だからせめてもと思い、
部屋の整理中に発掘された千代紙で、
鶴をおることにします。
迷惑かな。(笑)
いや、イケメンくんなら受け取ってくれるに違いない。
ああ、なみだ、涙、ナミダ。